第1話

 まだ、夜が明けたばかりの薄暗い街にポツポツと民家に明かりがもとり始める、ここ【リングマー・オウウィン王国】の首都シータルは別名【季節のまち】と呼ばれ、世界でも数少ない大国である。

 街に住む者達だけでなく季節の街と呼ばれるだけあって国内外や季節を問わず年間を通して様々な物資が手には入る。

 そのためここで手に入らないものは無い、もし手に入らなければそれはもう手にすることは出来ないと噂されるほどで、物資を求める者、はたまたひとはたげんとする商人や旅人などで常に賑わっている。

 その様子は目的はどうであれ初めてこの街を訪れる多くの者に、祭りをしているのかと思わせるのには充分で、この国の名物のひとつである。

 そんな街の一番高い丘の上にそびえ立つ王城【シータル城】の城門へと向かうひとつの影が・・・・。

 その人物は黒いマントのフードを深く被り、顔には不思議な模様が描かれたお面を付けた如何いかにも怪しげな風貌である。

「おい、そこのお前止まれ!」

「貴様、何者だ!」と足音に気付いた二人の衛兵が手にもつ槍の矛先を黒マントへと向け良い放った。

 黒マントは足を止めると顔を軽く横に向けあからさまに二人の衛兵に聞こえるようため息をいた。その態度に衛兵の一人が「こちらの質問に応えよ。貴様は、何者だ。」と怒気を強める。

 黒マントは気だるげに首筋に手を当て「全く、めんどくせぇなぁ」と今度は聞こえない程度にポツリと呟いた。

 そのかんも衛兵は、警戒の姿勢を崩すことなく槍を構え人影の反応を伺っている。

 黒マントはポケットから既に封が切られた手紙を取り出すと、衛兵にほらよと投げ渡した。地面に落ちた手紙を衛兵は拾い上げ、手紙に付けられた押印に目を疑った。

「これは・・・・・・・。」と言葉を失う衛兵に、もう一人がどうしたと声をかけ視線の先にある手紙に目を向ける。

 衛兵はハッと息をみ目を見開く。二人の衛兵は互いに顔を見合わせた。

「なぁ、もう良いか?そこ通りたいんだけど。」としびれを切らし、黒マントが声をかける。すると衛兵は、例え衛兵であっても他人の手紙の内容を勝手に見るのははばかられるのか「手紙の中身を確認しても良いか?」と尋ねると「さっさとしてくれ。」と言うので、では、と一拍置いて手紙を開く。

 そして、二人同時に文章の一部を口にした。

「「ログナ・フィネット、貴殿を王城付きけんくすに任命する!?」」とこれまた同時に目の前に立つ人物と手紙を交互に見やる。

「まさか、あなたが殿だったとは・・・・!」「大変失礼いたしました!ログナ・フィネット殿。」と先程とは打って変わって二人の衛兵は警戒を解き、槍の矛先を上に向け背筋を伸ばし敬礼の姿勢をとった。

「なぁ、そんなもんどうでもいい、確認も済んだんだからもう良いだろそこ退けよ。」とログナ・フィネットと呼ばれた黒マントは後頭部を掻いた。

「はい!勿論です!では、この手紙はお返しいたします。」「どうぞ、中へお入りください。」と衛兵はログナへ手紙を手渡し、門を開く。キィギィィという金属が軋むような音ともに門が開かれ、ログナは王城の敷地へと足を進める。

 案内役として買って出た衛兵の一人が付いていこうとしたがログナは必要ないと有無を言わさぬ雰囲気を漂わせ先を進む。

 ある程度進んだところで音を立てて門が閉まった。

 門の所からログナの姿が見えなくなると二人の衛兵は「あんな怪しい風貌でまさか医師兼薬師で、しかもそれが王城付きとはなぁ・・・人は見た見によらずとはまさにこのこどだな・・・・・・。怪我などをさせてしまわずに済んで良かった。」

「確かになでは勘違いされるだろうに。もっとそれらしい服装で来ていただきたいものではあるが、なんでも噂ではかなり腕の良い方らしいぞ。確か王弟殿下直々の御推薦というか御指名だったとか・・・・。」と暫くの間ログナが去って行った歩行を見つめていたのだった。






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