第1261話あらたまの 年の緒長く 相見てし
七月十七日を以って少納言に選任しき。すなわち悲別の歌を作りて、朝集使掾久米朝臣広縄の館に贈りのこす二首
(天平勝宝三年:751)七月十七日に少納言に選任された。そこで悲別の歌を作り朝集使掾久米朝臣広縄の館に残した悲別歌。
※掾久米朝臣広縄は、正税帳使として都に出向いており不在。
既に六載の期に満ち、たちまちに遷替の運に値ふ。ここに旧を別るる懐しみ、心中に鬱結す。渧(なみだ)を拭ふ袖、何を以ってか能く旱さむ。因りて悲歌二首を作り、もちて莫忘の志を遺す。その詞に曰く
※六載の期:天平十八年(746)六月に任官してから天平勝宝三年(751)七月まで、足かけ6年(満5年)。国司の任期は、4年、5年、6年と不定期。
既に6年の任期が満了となり、早くも転任の巡り合わせとなりました。ここで古くからの知人と別れる悲しさは、心の中に重く満ち、その涙をぬぐう袖を乾かす術もわかりません。そこで悲抜の歌二首を作り、忘れることはないとの心を遺します。
あらたまの 年の緒長く 相見てし その心引き 忘れえめやも
(巻19-4248)
石瀬野に 秋萩しのぎ 馬並めて 初鳥猟だに せずや別れむ
(巻19-4249)
八月四日。
長い年月、親しくお付き合いをしていただいた、そのお心は、とても忘れることはできません。
石瀬野で。秋萩を見ながら、馬を並べて初鳥猟をしようと思っていたのですが、できずにお別れとなりました。
家持は、七月十七日に少納言に選任され、八月五日に、奈良平城京に向かって任国(越中)を出立した。
上記二首は、八月四日なので、出発直前の歌になる。
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