第1082話竹敷の浦に船泊りする時に、各心緒を陳べて作りし歌十八首から(3)

わが裾は 手本通りて 濡れぬとも 恋忘れ貝 取らずは行かじ

                      (巻15-3711)

※恋忘れ貝:恋の憂さを忘れさせてくれるという貝。


もみぢ葉は 今はうつろふ 我妹子が 待たむと言ひし 時の経行けば

                      (巻15-3713)


私の衣の裾の、袖口がぐっしょりと濡れてしまっていても、恋忘れ貝を取らないで、この地を去ることなどできないのです。


もみぢの葉は、今はもう色が落ちて行くようです。

私の愛しい妻が待っていますと言った約束の時が、過ぎ去っていくというのに。


二首とも、望郷の歌、と言うよりも、妻恋しの歌。

長い旅の途中、現地の女性と係わりが無いとは言い切れないだろうけれど、やはり「一夜妻」では、心の奥の寂しさを埋めるに無理がある、そういうことなのだと思う。


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