第1040話武庫の浦の 入り江の 渚鳥 

新羅に遣わされし使人等、別れを悲しみて贈答し、海路に及びて情を衝めて思ひを陳べき。所に当たりてうたひし古歌を併せた


武庫の浦の 入り江の 渚鳥 羽ぐくもる 君を離れて 恋に死ぬべし

                        (万葉集巻15-3578)

遣新羅使として任命された人々が、出発にあたり、しばしの別れを悲しみ贈答し、海路に至れば、心を震わせ思いを述べた歌。及び、行程の所々で詠んだ歌を加えた。


武庫川の河口付近の入り江のの水鳥のように、私をその羽で守ってくれたあなた。そのあなたから離れたら私は恋いしさのあまり、死んでしまうでしょう。


見送る妻から見た歌。

羽ぐくもる 君を離れて:夫の腕に抱かれなくなる寂びしさ、寒さも表現していると思う。


※遣新羅使;遣新羅使(けんしらぎし)は、日本が新羅に派遣した使節。

668年以降の統一新羅に対して派遣されたものをいう。779年(宝亀10年)を最後に正規の遣新羅使は停止された

尚、この歌の時期は天平8年のもの。

新羅国が国名を「王城国」と改称したため、「日本の帝」が「その理由を問い糾す」との、かなり不穏な意図を持つ。そのため、派遣される遣新羅使の身の安全とて保障されていたとは言い難い。

そのため、かなり不安な旅出であったことは、容易に想定できる。

その不安を増すかのように、道中は悪天候の連続yや疫病の発生で苦難を極めた。。

結局使節は目的を果たせなかったうえに、大使阿倍継麻呂は新羅からの帰国途中に病死している。

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