足柄の　安伎奈の山に　引こ舟の　後引かしもよ　ここば子がたに

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（巻14-3431）

※安伎奈の山：あきなのやま。箱根山系の一峰。所在未詳。

※引こ：引くが、東国で訛ったもの。

※後引かしもよ：しりひかしもよ。後ろ髪を引かれるような、名残惜しい心理。

※ここば；このの意味。

※がたに：のために。

足柄山の安伎奈の山から引きずり下ろされる舟のように、名残惜しい。

この可愛らしい娘のために。

美しい娘の家から朝帰りする男の歌。

足柄山から引き下ろすのだから、相当に面倒、つまり名残惜しくて去り難い心理を表現する。

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