第940話我が背子が 使を待つと 笠も着ず

我が背子が 使を待つと 笠も着ず 出でつつぞ見し 雨の降らくに

                         (巻12-3121)

心なき 雨にもあるか 人目守り 乏しき妹に 今日だに逢はむも

                         (巻12-3122)


愛しい貴方からのお使いを待とうと、笠もかぶらず、門に出て見ていました。

雨が降りしきるというのに。


心なき雨と思います。人目を気にして、なかなか逢ってくれない貴方に、今日だけでも逢いたいのに。


古代の道は雨が降ると、ぬかるみになった。

そのためもあって、人通りが少なくなる。

だから、逢いに行こうと思うけれど、強い雨らしい。

女は笠もかぶらず、門まで出て待つけれど、男はためらっている。


晴れでも逢えず、雨でも逢えない、古代の恋は、なかなか難儀である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る