第913話我が背子が 朝明の姿 よく見ずて

我が背子が 朝明の姿 よく見ずて 今日の間を 恋ひ暮らすかも

                       (巻12-2841)


愛しいあの人が夜明けに出て行く姿をしっかりと見られませんでした。

今日一日は、それが残念で、さらに恋しくてならないのです。


忘るとや 物語りして 心遣り 過ぐせど過ぎず なほ恋ひにけり

                       (巻12-2845)

恋の苦しさを忘れることができるかと思って、人と世間話をして、気持ちを紛らわせようとしたけれど、とてもできなくて、いっそう恋しくなっています。


朝、男が出て行ったけれど、また逢いたくてしかたがない。

もっとしっかり見送ればよかった。

人と世間話をしても、全然、気が紛れない。

かくして。男が通って来るまでの時間は、女は悶々とし続けることになる。

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