第901話紀伊の国の 飽等の浜の 忘れ貝

紀伊の国の 飽等の浜の 忘れ貝 我は忘れじ 年は経ぬとも

                     (巻11-2795)

※飽等:所在未詳。和歌山県和歌山市加太の田倉浜説あり。

※忘れ貝:二枚貝の片方だけになったもの。「恋忘れ貝」その貝を拾えば恋の苦しさを忘れさせるという。


紀伊の国の飽等の浜の忘れ貝のように、私はあなたを忘れたりはしません。どれほと年を経ようとも。


水くくる 玉に交じれる 磯貝の 片恋のみに 年は経につつ

                      (巻11-2796)

※玉:水中の美しい小石など。

※磯貝:磯辺の岩に付着する貝。一枚貝。


水の中にひそむ玉に交じる磯貝のように、貴方への片思いのままに、年だけが過ぎるだけなのです。


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