第883話佐保の内ゆ あらしの風の 吹きぬれば

佐保の内ゆ あらしの風の 吹きぬれば 帰りは知らに 嘆く夜そ多き

                        (巻11-2677)

※佐保の内:平城京の北東の佐保の地。奈良市法華寺町、法蓮町一帯。海龍王寺、法華寺等あり。法華寺はかつての藤原不比等邸、その後光明皇后宮になった。往時の貴人たちの居住地。尚、海龍王寺の十一面観音像は素晴らしい美顔。見学をお勧めしたい。



佐保の地を山からの風が吹き抜けて来るようになりました。

あのお方の帰りがいつになるかとわからず、嘆く夜が多くなっています。


季節的には、寒くなり始めた秋から冬だろうか。

春日山からか、寒い風が強く吹いて来るので、その寒さを嫌がり、あのお方はいつ帰って来るのか、全くわからない。

あるいは、もっと近い別の愛人の屋敷に入りびたっているのか。


いろんな不安を察してしまう歌である。





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