第881話まそ鏡 清き月夜の ゆつりなば

まそ鏡 清き月夜の ゆつりなば 思ひは止まず 恋こそ増さめ

                       (巻11-2670)

澄み切った鏡に見えるほど、この清らかな月夜が暗がりになってしまうと、私の胸の思いは止まず、恋心だけが増すことになるでしょう。


今夜の 有明月夜 ありつつも 君をおきては 待つ人もなし

                       (巻11-2671)

今夜の有明の月夜をずっとながめながらも、貴方の他には待つ人もいないのです。


二首とも名月を眺めながらの、わかりやすい歌。

現代人は、まず月など滅多に眺めない。

ましてや名月に想い人を思う、などもないだろう。

これも時代の変化か、風情の劣化かもしれない。

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