第837話朝寝髪 我は梳らじ 愛しき

朝寝髪 我は梳らじ 愛しき 君が手枕 触れてしものを

                   (巻11-2578)


寝起きの髪を私は櫛で梳かしません。

愛しい貴方の手枕に触れた髪なのですから。


後朝に女性が詠んだ歌。

夫が朝早く家を出て行った直後だろう。

愛しい夫と、抱き合って寝た、その余韻。

髪を梳かしてしまうと、夫の肌の余韻も消えてしまう、と思ったのだろうか。

だから、少々乱れていたとしても、梳かさないと詠む。


愛する人の肌の余韻を失いたくない。

艶やかにして、愛のこもる名歌と思う。





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