第766話あしひきの 山のあらしは 吹かねども

あしひきの 山のあらしは 吹かねども 君なき宵は かねて寒しも

                       (巻10-2350)

※あしひきの:山にかかる枕詞。

※かねて寒しも:注釈書では「前もって」寒い、「あらかじめ」寒いとされているものがあるけれど、「余程」「増して」に解したほうが自然。


山から強い風は吹いてはおりません。

でも、あなたのいない夜のほうが、余程寒さを感じてしまうのです。


何度読んでも、心に響く歌と思う。

肌感覚の寒さは、肌を合わせないと、おさまりようがない。

風ではなく、厚着でもないのである。

「寒いから温めに来て欲しい」

愛しい女に言われたら、男としては行くしかない。

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