八田の野の　浅茅色づく　愛発山　嶺の沫雪　寒く降るらし

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（巻10-2331）

※八田の野：奈良県大和軍郡山市矢田付近（生駒山東南麓）

※有乳山：福井県敦賀市。琵琶湖北部から越前にかけての山。近江から越前に向かう要路にあり、古代は愛発（あらち）の関が設置されていた。この山から北に向かい、北陸道となる。

八田の野の浅茅が色づきはじめた。

おそらく、愛発山の峰には泡雪が寒々と降ることだろう。

作者は、かつて愛発の関で警護の役でも、していたのかもしれない。

そして、その関には気心を通じた人が残っている。

自分の家付近の八田の野の浅茅の色づきをみて、おそらく泡雪が降る愛発の地に残して来た知人の寒さを思いやったのかもしれない。

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