第718話天飛ぶや 雁の翼の 覆ひ羽の
天飛ぶや 雁の翼の 覆ひ羽の いづく漏りてか 霜の降りけむ
(巻10-2238)
※覆ひ羽:空を覆うように広げた翼の意味。
空高く飛ぶ雁の翼のどこから漏れて、これほど霜が降りたのでしょうか。
古代、雁は天空に充満する霜気の中を飛ぶ鳥と思われていた。
その雁が大量に、空を覆うほどに飛んでいたのかもしれない。
作者としては、雁の翼に霜降りに対する「傘」を期待したのだろう。
しかし、その翼(傘)に穴やすき間があり、結果として霜は降りてしまう。
霜降りから発生する寒さは強まるばかりで、大自然の流れは、人間の期待の通りにはならない。
そんな思いが込められた歌のように解釈した。
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