第624話春雨に ありけるものを 立ち隠り

春雨に ありけるものを 立ち隠り 妹が家道に この日暮らしつ

                       (巻10-1877)


春雨程度ではあったけれど、途中で雨宿りをしてしまって、妻の家には行かず、今日一日を無駄に過ごしてしまった。


何とも事情が不明な歌。

春雨程度なら、素直に妻の家に行けばいいものを、途中で雨宿りして、それも一日雨宿りなど、ありえるのか。

相当、ものぐさな男か、あるいは妻と喧嘩していて行きづらかったのか。

それとも、途中に悪友がいて、そこで飲んでしまったのか。

悪友なら、まだましかもしれない。

妻の家には行かずに、途中にあった妾の家で過ごしてしまったのか。


万葉集には、時折、こんな微妙な歌があり、それがまた面白い。

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