第598話春三月、諸卿大夫等の難波に下りし時の歌
白雲の 龍田の山の 滝の上の 小桉の嶺に
咲きををる 桜の花は 山高み 風し止まねば
春雨の 継ぎてし降れば 上つ枝は 散り過ぎにけり
下枝に 残れる花は しましくは 散りなまがひそ
草枕 旅行く君が 帰り来るまで
(巻9-1747)
我が行きは 七日は過ぎじ 竜田彦 ゆめこの花を 風になけらし
(巻9-1748)
春三月は、神亀三年(726)十月から、天平四年(732)三月までの間の三月。
藤原宇合を長官とする諸卿大夫たちが、難波宮に下った時に、高橋虫麻呂が付き添い、詠んだ歌。
白雲が立つ龍田山の滝上の小桉の嶺で咲き誇っていた桜の花は、山も高く風も強く吹き続け、しかも春雨も降り続けたので、梢の花はすっかり散ってしまった。
だから、下枝に残る花は、もうしばらくは散ってはいけない。
難波にお出かけになられた我が君が再びこの地に帰って来るまでは。
私たちの旅は、七日を過ぎない。
だから竜田彦様、何とかして、この花を風に散らさないで欲しいのです。
主君藤原宇合のために、桜には散るなと指示し、龍田彦神には風で散らさないで欲しいと願う。
ゴマすりと言えばその通り、人間世界はどんな時代でも、似たようなもの。
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