第594話河内の大橋を独り去く娘子を見し歌一首
河内の大橋を独り去く娘子を見し歌一首短歌を并せたり
※河内の大橋:藤井寺市船橋町付近の大和川の橋説あり。
しなてる 片足羽川の さ丹塗りの 大橋の上ゆ
紅の赤裳裾引き 山藍持ち 摺れる衣着て
ただひとり い渡らす児は 若草の 夫かあるらむ
橿の実の ひとりか寝らむ
問はまくの 欲しき我妹か 家の知らなく
(巻9-1742)
※しなてる:片足羽川の枕詞。
※片足羽川:大和川が龍田から河内に流れ出た付近の名前説、河内大橋のかかる川。
大橋の 頭に家あらば まかなしく ひとり行く児に 宿貸さましを
(巻9-1743)
片足羽川の赤く塗った大橋の上を、紅の赤裳の裾を引き、山藍染めの着物を着て、ただひとり渡っていく美しい娘は、すでに若々しい夫がいるのでしょうか。
それとも、橿の実のように、独り寝なのでしょうか。
私が愛しく思う気持ちを伝えたいけれど、彼女の家がわからないのです。
あの大橋のたもとに、私の家があるのなら、一人行くあの娘に、宿を貸したいけれど。
これも高橋虫麻呂の作。
ひとり橋を渡る娘を心配して「橋のたもとに家があれば宿を貸したい」なので、時間帯は夕暮れ時かもしれない。
好色の男とすれば、可愛い女の子を見かけたので、ナンパしたい。
その女の子にしてみれば、大きなお世話とか、声もかけられないヘタレ男など、どうでもいいのかもしれないけれど。
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