第567話今のごと 心を常に 思へらば

県犬養娘子の、梅に依りて思ひを発しし歌一首


今のごと 心を常に 思へらば まづ咲く花の 地に落ちめやも

                      (巻8-1653)

※県犬養娘子:伝未詳。出身地名もなく、氏族名しかわからない。歌はこの一首のみ。

※まづ咲く花:序詞。「散ることがない」意味で「地に落ちめやも」を起こす。ここでは梅の初花の意味で用いている。


今のように、ずっと変わらず心に思い続けていれば、最初に咲く梅の初花のように、地面に散り果てることもないでしょう。


梅の花の歌ではあるけれど、それだけではない。

しっかりと誠実に思い続けていれば、愛する人も自分から去らない、疎遠になることはないでしょう、そんな願望を込めた歌と思われる。


まだまだ恋愛に未熟な、若い娘の心、そんな健気な歌と思う。


「実際は、そんなことはありえない」などと言うのは、相当にひねくれた、野暮の極み。



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