第536話尾花と萩

日置長枝娘子の歌一首

秋づけば 尾花が上に 置く露の 消ぬべくも我は 思ほゆるかも

                        (巻8-1564)

大伴家持の和せし歌一首

我がやどの 一群萩を 思ふ児に 見せずほとほと 散らしつるかも

                        (巻8-1565)

日置長枝娘子は、伝未詳。家持が若い時期に関係を持った女性の一人。

歌は、この一首のみ。


秋が深くなってきました。尾花の上の露のように、私の存在などすぐに忘れ去られてしまうかと、思っているのです。


庭の一群の萩の花を、愛しい貴方に見せないまま、あやうく散らしてしまうところでした。


娘子の「尾花の露が消える」に対して、「まだ残る萩の花」で、返している。

家持の訪れが減り不安な娘子に対して、まずは萩の花を代理で送り、言い訳をする、取り繕っているような、恋の駆け引きになっている。





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