第528話我が岡に さ雄鹿来鳴く 初萩の

太宰帥大伴卿の歌二首


我が岡に さ雄鹿来鳴く 初萩の 花妻問ひに 来鳴くさ雄鹿

                       (巻8-1541)

※我が岡:大宰府近辺の岡。

※万葉人は、萩の花を鹿の妻と見なす考えがあった。


我が庭の岡の 秋萩の花 風をいたみ 散るべくなりぬ 見む人もがも

                       (巻8-1542)


我が庭の岡に、雄鹿が来て鳴いている。

荻の初花を妻問うために来ている雄鹿なのだ。


この庭に咲く秋萩の花は、風に負けて散りそうになっている。

見てくれる人がいてくれればと思うけれど。


大伴旅人は、神亀五年(728)に、妻を失くしている。

この二首の歌は、おそらく、その後に詠まれたもの。


本当は妻と一緒に、萩の花を見たかったけれど、今となっては、それもかなわない。

そんな哀感が感じられる歌である。



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