第503話神奈備の 磐瀬の杜の ほととぎす

志貴皇子の御歌一首


神奈備の 磐瀬の杜の ほととぎす 毛無の岡に いつか来鳴かむ

                         (巻8-1466)

※神奈備:「神の坐すところ」を意味する語。

※磐瀬の杜:奈良県生駒郡斑鳩町の龍田地方の森、あるいは同町の車瀬の森(龍田神社の南)、あるいは同郡三郷町の大和川北岸の森説あり。

※毛無の岡:未詳。いずれにせよ、志貴皇子の住まいの近くの岡。法隆寺北方毛無池周辺と比定する説がある。



神奈備の磐瀬の森のホトトギスは、いつになったら、毛無の岡に来て鳴くのだろうか。

ホトトギスの到来、鳴き声を待ち望む歌と読むのは浅いかもしれない。

「毛無の岡」を単に法隆寺北方毛無池周辺と考えるだけではなく、「草木が生えていない岡」と考えると、不毛の境遇にある自分のところにも飛んできて鳴いて欲しいと考えることもできる。

志貴皇子は天智天皇の第七皇子。

壬申の乱以後は、天武系ばかりが優遇され、志貴皇子は冷遇状態。

そんな満たされない思いを詠んだのかもしれない。

尚、その後天武系は途絶え、子の白壁王は光仁天皇として即位。

そして、現皇室まで、志貴皇子の系統が続いている。



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