第502話ほととぎす いたくな鳴きそ 汝が声を

藤原夫人の歌一首 明日香清御原宇御めたまひし天皇の夫人なり。

字を大原大刀目と曰ふ。即ち新田部皇子の母なり。


ほととぎす いたくな鳴きそ 汝が声を 五月の玉に 合へ貫くまでに

                           (巻8-1466)

※藤原夫人は、藤原鎌足の娘。

※明日香清御原宇御めたまひし天皇:天武天皇。

※新田部皇子:天武天皇第七皇子。


ホトトギスよ、そんなに鳴いてはいけません。

お前の声を、五月の玉に混ぜ、緒に通す日が来るまでは。


古代、5月5日の節句に、薬玉を飾り、邪気を払う習慣があった。

麝香、沈香などの香を錦の袋に入れ、菖蒲・蓬・橘の実などを玉の代わりに付け、五色の糸を垂らす。


ホトトギスがあまりにも美しく賑やかに鳴くので、5月の節句までに鳴き枯れてしまうことを心配する、一種の風流の心を詠んだ歌と思われる。


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