第495話心ぐき ものにそありける 春霞
大伴宿祢坂上郎女の歌一首
心ぐき ものにそありける 春霞 たなびく時に 恋の繁きは
(巻8-1450)
本当に心苦しいものなのです。
春霞がたなびく麗しい季節に、恋心も激しくなりまして。
作者の大伴坂上郎女にも、姓(宿祢)を記している。
万葉集の中で、坂上郎女に姓を用いたのは、この一首のみ。
女性であっても身分の高い者には性を用いることがあった。
県犬養橘宿祢三千代(藤原不比等妻、光明皇后の母)等。
ただし、賀茂真淵説では、万葉集伝来の途中で、「大伴宿祢家持贈坂上郎女一首」
の中で、「家持贈」が抜け落ちてしまったとされている。
以上、本当の作者が不明な一首となっている。
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