第434話木に寄せき(2)

たらちねの 母がその業る 桑すらに 願へば衣に 着るといふものを

                         (巻7-1357) 

母が苦労して育てている桑の木でさえ、懸命にお願いすれば、やがては衣として着ることができるというのに。


現代では、ほとんど見られない養蚕。

しかし、古代では、女性の困難にして、大事な生業であった。

良質な桑を育てないと、立派な蚕は育たない。

幼虫の段階では柔らかな葉、成虫になれば艶と張りのある葉が必要となる。

手抜きをすれば、蚕を好物とする蟻が長い列をなして、成虫を全滅させてしまう。


おそらく結婚の許しを望む娘の歌。

桑と蚕には熱心なのに、どうして私の懸命の願いが、母には通じないのかと嘆く。

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