第391話問答(2)

楽波の 志賀津の海人は 我なしに 潜きはなせそ 波立たずとも

                        (巻7-1253)

大船に 楫しもあらなむ 君なしに 潜きせめやも 波立たずとも

                        (巻7-1254)

右の二首は白水郎(あま)を詠みき


楽波の志賀津の海人さん、波が立っていなくても、私がいない時には海に潜らないでください。


そんなことより、私は大船に櫂が欲しいのです。櫂さえあれば波が立たない時でも、水に潜ったりはしないので。


前の歌は、男性が私がいない時には海に潜らないで欲しい、たとえ海に波が立っていなくてもと、海人の女性を気遣う歌。

それに対する後の歌は、大船に櫂がないので、仕方なく潜っているのです。ですから櫂さえあれば波が立っていなくても、沖に出て良い漁が出来るので海に潜ったりはしませんと返す。


この歌における「楫」は、実は男。

男が私の姿が見えないからといって、噂が立たないとしても、ふらふら男遊びをしないようにと、いましめる。

女としては、あなたが私をほったらかしにするからいけないのです。

あなたが頼りになる人ならば、噂が立たないとしても、おかしな真似はしませんよとの寓意を感じる。


これも、宴会時の戯れ歌らしい。

男は都から来た官僚、女は遊女と思うと、理解がしやすい。



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