第366話羇旅にして作りき(1)

家離り 旅にしあれば 秋風の 寒き夕に 雁鳴き渡る

                   (巻7-1161)

家を離れ、旅を続けていると、秋風の吹く寒い夕方の空に、雁が鳴きながら渡っていく。


雁は秋に来て、春に北の国に来る渡り鳥。

その雁に家を離れて旅をする自分の姿を重ねる。

また、雁は自分の家と我が身をつなぐ使者という中国の故事が万葉人にも定着していたという。

そうなると、鳴きながら飛び去る雁の声は、家から届いた声なのか。


まさに旅愁そのものを表現する名歌と思う。

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