第344話河を詠みき(6)

古も かく聞つつか しのひけむ この布留川の 清き瀬の音を

                       (巻7-1111)


古き世でも、このように聞こえていたのでしょうね。

心から愛おしく思う、この布留川の清々しい川瀬の音を。


布留川は奈良県天理市の布留の地を流れる川。

その「布留川」を「古くから慕われてきた川」と感じる。

その川のほとりでは、昔も今も変わらずに、清々しい川瀬の音を聞き続けている。


尚、石上神宮は、布留川にちなむ伝説を紹介している。


昔、布留川の上流から、一ふりの剣が美しい水の流れとともに、泳ぐように流れてきた。

そして、流れながら剣に触れるものを、次から次へと2つに切ってしまう。

その時、その川の下流では、1人のうら若い娘が洗濯をしていた。

ふと、その娘が頭を上げて川上を見ると、川上から岩や木を切りながら、流れてくる剣を目にする。

すばやく避けようとした瞬間、洗いすすがれた白い布の中に剣が流れ込んだ。

あわや布が切れたかと思ったけれど、そのまま剣は布の中にぴたりと留まっている。

娘は驚き、これはただごとではなく、神様のされる事だと、早速その見事な剣を神宮に奉納した。

そして、剣が布に留まった所なので、布留という地名が出来たとの伝説。

また、石上神宮の鎮座地はこの布留町。




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