第328話月を詠みき(2)
山の端に いさよふ月を 出でむかと 待ちつつ居るに 夜ぞふけにける
(巻7-1071)
明日の宵 照らむ月夜は 片寄りに 今夜に寄りて 夜長くあらむ
(巻7-1072)
玉垂の 小簾の間通し 一人居て 見る験なき 夕月夜かも
(巻7-1073)
春日山 おして照らせる この月は 妹が庭にも さやけかりけり
(巻7-1074)
山の端で出るのをためらっている月を、いつ出て来るかと待ち続けていたら、こんなに夜が更けてしまいました。
明日の夜にも月は夜を照らすのでしょうが、できれば今夜のほうだけに寄っていただいて、この美しい夜を長く過ごしたいと思うのです。
玉垂れのすだれの小さな隙間越しから、一人だけで見るなど、全く見る甲斐のない夕月なのです。
春日山一帯を、その高みからあまねく照らしているこの月の光は、愛しいあなたの家も、明るく照らしていますね。
まず一首目は月待の歌そのもの。
二首目は、次に明日もお出でになるのでしょうが、今夜の月光があまりにも美しいので、明日の夜の分も合わせて二晩分も欲しいと願う。
三首目は、女性の恨み歌と言われている。こんなに美しい月夜を、玉垂れの隙間越しでしか見ることが出来ないなんて、つまり男君が来ない悔しさと寂しさもこめる。
四首目は、春日山のふもとにある妻の家に来た男の歌、待たせ続けて、ようやく到着したのだろうか。
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