第315話雲隠り 行くへをなみと

豊前国の娘子の月の歌一首  娘子は字を大宅と曰ふ。姓氏未だ詳らかならず


雲隠り 行くへをなみと 我が恋ふる 月をや君が 見まく欲りする

                         (巻6-984)


すでに雲に隠れて行方がわからない、私が見たいと思う月を、貴方も一緒に見たいと思いますか。


豊前国の娘子大宅は、おそらく遊女。

古来、解釈が難しいとされた歌になるけれど、おそらくは遊女が客を誘う歌。

「雲は隠れてしまいましたけれど、また出てくるまで、御一緒にどうですか」

遊女も客がいて、はじめて商売になる。

月が見えないからといって、すんなり帰られては商売にならない。


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