第302話玉藻刈る 辛荷の島に
反歌三首
玉藻刈る 辛荷の島に 島廻する 鵜にしもあれや 家思はざらむ
(巻6-943)
島隠り 吾が漕ぎ来れば ともしかも 大和へ上る ま熊野の船
(巻6-944)
風吹けば 波か立たむと さもらひに 都太の細江に 浦隠り居り
(巻6-945)
玉藻を刈る辛荷の島で、島を巡って魚を捕る鵜だからであるのだろうか、故郷の家を思わないのは。
島蔭を巡って漕いでくると、うらやましくも、大和に上る熊野の船が見えている。
風が吹き、波が立つのかと、様子を見ながら、都太の入り江で待機して隠れている。
官命で、難波津から瀬戸内海を西へ向かう船旅で、見る景色も新鮮で面白いけれど、やはり思うのは、大和に残してきた妻。
鵜だから、島を巡って魚を捕るだけでいいけれど、実は私は島を巡って大和に帰りたいのが本音。
島蔭を巡って見てしまったのは、大和にのぼる熊野の船、大和に帰りたい赤人としては、うらやましくてしかたがない。
風が吹いて波が立てば、海路は進まず、ただ待機するのみ、ストレスもたまる。
旅路の歌でもあり、また故郷を思う歌でもある。
とにかく素直に詠んでいるので、わかりやすい。
仕事とはいっても、単身赴任は、なかなか辛い。
特に危険な古代の船旅、残した妻を思う気持ちは、より深くなる。
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