第191話大伴駿河麻呂と大伴坂上郎女(2)

大伴宿祢駿河麻呂の歌一首

相見ずて 日長くなりぬ このころは いかにさきくや いふかし我妹

                           (巻4-648)

大伴坂上郎女の歌一首

夏葛の 絶えぬ使ひの よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも

                           (巻4-649)


大伴宿祢駿河麻呂の歌一首

お顔を見ることのない日が、長くなりました。

このごろはいかにお過ごしなのでしょうか、とても貴方のことが気がかりです。


大伴坂上郎女の歌一首

ずっと絶え間なく届けられていたお手紙が届かなくなったので、何か事件でもあったのかと、心配しておりました。

※夏葛の:絶えずにかかる枕詞。


求婚されている娘の母としては、大伴宿祢駿河麻呂からの手紙が滞っても、また不安。

娘の心も落ち着かないし、駿河麻呂は親族でもあるし、世間体もある。

大伴宿祢駿河麻呂としては、何かにまぎれて手紙を出さなかっただけなのかもしれないけれど、大伴坂上郎女はそうはいかない。

それで、「お変わりないですか」の手紙が届いて、ホッと安心した感じを、そのまま歌にしているのである。

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