第166話笠女郎 夕されば 

夕されば 物思まさる 見し人の 言問ふ姿 面影にして

                    (巻4-602)


夕暮れになると物思いがいっそう募ります。

お逢いした貴方の、話しかけてきた時の姿が、面影に浮かんで来るのです。


今日もまた逢うことができないのだろうか。

夕暮れを見つめながら、笠女郎の心に浮かぶのは、かつて逢った時の家持の姿、愛しい言葉なのだろう。

ますます、思いはつのるけれど、ただ、それだけ。

何も、恋が実る兆しがない。

あなたは、この美しい夕暮れの時、どこで、誰といるの?

私のところには来ないの?

かつての面影と言葉だけでは、この美しい夕暮れは辛すぎる。

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