第163話笠女郎 恋にもそ

恋にもそ 人は死にする 水無瀬川 下ゆ我痩す 月に日に異に

                       (巻4-598)

※水無瀬川:水が表面には現れずに伏流する川。


恋のためにも、人は死んでしまうのです。

伏流水のように人目には見えず、ひそかに慕う恋心から、私は痩せてゆくのです。

日々、そして月ごとに。


恋い慕う家持からは、何の音沙汰もない。

恋心と、それがかなわない辛さは、他人には見せたくないし、見せない。

しかし、その辛さゆえ、日々、月ごとに、私は痩せていく。

「恋のためにも、人は死んでしまう」、それは嘘偽りではありませんよ。

本当のことなのです。



おそらく、恋の辛さのため、食事も満足に摂れなくなっているのだと思う。

家持には家持なりの事情もあると思うけれど、苦しむだけの笠女郎に、「少ししでも声をかけてあげたら」と、同情心が芽生えてしまう。



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