第146話秘めなければならない逢瀬

賀茂女王の歌一首

大伴の 見つとは言はじ あかねさし 照れる月夜に 直に逢へりとも

                           (巻4-565)


見たとも言いません、明るい月夜に、直接お逢いしたとしても。


賀茂女王は、冤罪に巻き込まれて自害した長屋王の娘。

この歌を詠んだ時期は、まだ大犯罪人の娘。

相手は、大伴家の三依。

「大伴三依を見た」の意味と、三依の名前の「大伴御津(みつ):美しい浜辺で有名」の意味を掛けている。

迷惑をかけたくないので、明るい月夜の御津の美しい浜辺で、直接お逢いしても、つまり共寝しても、その事実は認めませんと詠む。


かくして、二人の逢瀬は、秘めなければならない逢瀬となる。

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