第102話 山辺赤人勝鹿の真間の娘子の墓にたたずむ。(2)

我も見つ 人にも告げむ 葛飾の 真間の手児名が 奥つ城処

                       (巻3-432)

葛飾の 真間の入江に うちなびく 玉藻刈りけむ 手児名し 思ほゆ

                       (巻3-433)


私も確かに訪れた 他の人にも教えよう 葛飾の真間の手児名の御墓を


葛飾の真間の入江で、なびいている玉藻を刈ったという、手児名のことが心に浮かぶ。


真間の手児名の伝説を歌った長歌の反歌。

多くの男に求婚されて苦しみ、入水自殺を遂げた悲劇の乙女の、ありし日の姿を清らかに詠んでいる。


玉藻を刈っている時の手児名は、まさかここで自殺すると思っていたのだろうか。

そんなことは、思いたくもないし、知るすべもない。

しかし、波間に漂う玉藻と、溺死して浮かび、漂う女性の美しい黒髪。

時に、不吉な印象の重なり合いがある、そんな思いを抱いてしまう。

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