第62話 太宰師大伴卿の、酒を誉めし歌(6)

なかなかと 人にあらずは 酒壺に なりにてしかも 酒に染みなむ

                         (巻3-343)

どうでもいい人間でいるよりは、いっそのこと酒壺になってしまいたい。

そうすれば酒がもっと身体に染めこむだろうから。


※三国時代の呉の大夫鄭泉が酒好きがこうじて、「自分が死んだら、その屍を窯場の側に埋めて欲しい。そうすればやがては、陶土になって酒壺にしてくれるだろう」と遺言した故事に基づく。


酔った歌のようで、しっかりと故事に結び付いている。

ただの酔っぱらいでは、この歌は詠めない。

しかし、人でいるより、酒壺になってまでも、酒に染みたい。

あきれるほどの、酒好き、この歌も楽しい。

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