第57話 太宰師大伴卿の、酒を誉めし歌(1)

太宰師だざいのそち大伴卿の、酒を誉めし歌

しるしなき ものを思はずは 一杯ひとつきの 濁れる酒を 飲むべくあるらし

                        (巻3-338)


あてにならない霊験などを待ち思っても仕方がない、濁り酒を一杯飲むほうが、よほどよいに違いない。


「験」を神仏の霊験ととらえてみた。

一般的な解説書では「何もならない物思い」が主流。


こんな歌を読まれては、神仏も笑ってしまうかもしれない。

高価な献金、お布施、真面目な御祈祷、読経などは、あてにならない。

安あがりの濁り酒の方が、効果があるというのだから。

百薬の長は、あてにならない神仏よりも、よほどよい。

酒好きな人には、まさに金言と思う。


太宰師だざいのそち大伴卿:大宰府長官大伴旅人。


※しばらく酒賛歌を続けます。面白いので(笑)


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