第44話 高市連黒人の羇旅の歌(2)

桜田に たづ鳴き渡る 年魚市潟あゆちがた 潮干にけらし たづ鳴き渡る

                                (巻3-271)       

桜田に向かって、鶴が鳴きながら渡っていく。

年魚市潟は、潮が引いてしまったのだろう。

鶴が鳴きながら渡っていく。


桜田は、名古屋市熱田区及びその南部一帯。

鶴が餌を求めて、鳴き渡る声を聞き、年魚市潟の潮干を推測したようだ。


旅の途中、黒人は、おそらく年魚市潟の干潟を渡ろうとして潮の引くのを待っていたのではないのだろうか。

その合図として、餌を求めて移動する鶴の声を、年魚市潟を渡るための道案内とした。


鶴鳴き渡るを、二度繰り返しているのは、潮が引いて、ようやく年魚市潟を渡ることができる、うれしさと、安心感なのだろうか。


現代人では、考えもしない旅路の心理なのだと思う。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る