第4話 やっぱり私は
「あれ...?タイリクさん、キリくんは?」
帰宅早々アミメに聞かれる。
最初ははぐらかそうと思い、適当な言い訳を吐こうとも思ったが、結構長くいる間柄、そんなものは通用しないと悟った。
私が口を開くより先に彼女は、
「...キリくんを置いて行ったんですか?」
若干意味合いは違うが...
「“置いて行った”と言ったら語弊はあるけど...」
「どうしたんですか」
「喧嘩別れだよ」
正直にそう言った。
「勝手に母親にされて、勝手に子守りさせられて...、こっちは迷惑だったんだ。
その上、アイツはアイツで他人に迷惑を掛ける。我慢の限界だよ。そうアイツに伝えたら、もういいって...」
彼女は話を聞いて、一瞬怒りも感じたが、
すぐに抑え込んだ。この自分にも一応問題の非はある。悪ふざけが過ぎ、いつの間にか親友を追い込んでいたと。
「言いたい事が2つあります...。
1つは、私の方も調子に乗りすぎました。
一方的に囃し立てて...。タイリクさんの気持ちも考えずに...。申し訳ないです。
もう1つは、正直に言って、母親目線とかそういうの一切無しでキリくんのこと、タイリクさんはどう思ってますか?」
「どうって...」
客観的に見て私がアイツをどう思っているか、という質問の回答に少し戸惑った。
今思えば、アイツのお陰で嫌々だった火も克服出来たし、知らなかった事を学べた。
悪いことばかりじゃない。
「まあ...、友達としてなら、一緒にいると
面白いし、好きかもしれない」
「じゃあ、キリくんを探してくれますよね。
...友達がセルリアンに食べられてたら、嫌じゃないですか」
アミメの一言で過去の映像がぼんやりと流れた。あんな大変な思いをさせるのは、流石に可愛そうだ。
「ああ...。アイツと仲違いしたまま別れるのも癪に障るからね。後の事は後で考えればいい」
「アリツさんにも手伝ってもらいましょう」
こうして、アイツを探すことになった。
「...」
一方、彼は森の中で蹲っていた。
迷ってしまい途方に暮れていたのだ。
(誰かいないかな...)
その時。
ガサゴソと茂みから音が聞こえた。
「...えっ」
「ったく、アイツは何処に行ったんだ?」
頭を掻きながら言った。刹那。
ある音が聞こえた。
(・・・もしや)
「あっ・・・!」
彼の背後にいたのはセルリアンだった。
必死に走って逃げる。
だが、相手も早い。
気が付けば、前方は崖、下には川が流れている。
逃げ場がない。
「...ッ!」
突如、上から黒い影が過ぎて行ったと思った瞬間、セルリアンは弾け飛んだ。
私は驚いた顔をしたアイツを、黙って抱きしめた。
「...ごめんよ」
その後
タイリクは母親として責任を持って行動するようになった。
そして、4人で幸せに暮らしたとさ...。
母狼 みずかん @Yanato383
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