第5話 ドリームタワークイズバトル
ドリームタワーは今年夢の島に建設された、世界一となる385階建の超超超高層ビルだ。
このビルの完成を記念して行われるのが、人気テレビ局が主催する5人1組となって1階ごとに3問づつ用意された課題に挑戦していきながら、最上階を目指すクイズバトルであり、ミノリは夢の島で在学していた難関私立中学校である、夢の島学園の成績優秀者でチームを作り、出場することが決まっていたのだ。
でも夢の島を追い出され、希望の島中学校に転校したミノリにはもう出場する術がなかった。
「ちくしょう!出たかったなぁ~!1番になって、優勝して!、それで優秀な高校、優秀な大学に行きたかったなー!」
ミノリは、今度はみんなに聞こえるような大きな声で夜空に向かってそう叫んだ。
「それなに?楽しそうだな!」
マコトだけじゃない、その場にいるトモも、タツミも、ユウも、そう言ってミノリの顔を覗き込んだ。
「無理無理無理、あれは全国の優秀な名門中学、高校の、それだけじゃない大学の優秀な生徒たちの中でも、更に秀才と呼ばれるような奴らがチームを作ってくるんだぜ?、お前らなんかに…」
そう言ってからミノリはハッとした。
ここにいる5人は実はみな成績優秀なのだ!
5人だけではない、実際のところ希望の島中学校の生徒はみな驚くほど成績は優秀だった。
模擬テストの結果に、当初ミノリは随分驚かされたものだ。
塾もない島なのに、その分授業への集中力はハンパなかった。
図書館の貸し出し冊数も驚く数値で、ミノリのいた夢の島学園の実に3倍だった。
皆家の仕事もあるので宿題は学校に帰る前に各々の教室や図書室でやっていた。
なるほど分からないところは分かる奴から教えてもらい、それでも分からないことは先生にすぐ聞きに行けるのだ。
その中でもここにいる5人はズバ抜けていた。
まさに秀才と呼んでもよいほどだった。
ミノリは数学が得意で大学レベルの問題にも挑戦出来るし、トモは国語、特に漢字については天才と呼べる知識を持ち、タツミは父親の元の仕事が歴史研究家とあってかやたら歴史に詳しいし、ユウの英語は一級品で、他にも中国語、フランス語、スペイン語を使いこなしているのだ!、タネを明かせば希望の島に来るまでの間に、両親と暮らしたことのある国の言葉なのだ。
そしてマコトはオールマイティにどの科目でも、他の3人を凌いでの成績1番なのだ。
ただ数学だけがミノリのに次いでの2番だ。
それに雑学というか、知恵というか、ミノリ以外の4人には学校では教わることのない、たくさんの知識をもっていた。
それはオジィやオバァ、両親から受け継いだもののようだった。
両親との会話なんて殆どなく、学校と塾の行き帰りだけの毎日だったミノリには、悔しいほど羨ましく思えることだった。
その中でもマコトの知識はズバ抜けており、物事の真意を見抜くような直感も持っていて、同じ中学生とは到底思えない落ち着いた雰囲気を纏っている。
更に言うならば運動神経も抜群で、特に素潜りでは大人を含めても、希望の島にマコトに敵うものはいない。
この5人だったら…
そう一瞬思ったが直ぐに首を横に振りながら言った。
「このクイズバトルに出るには参加料が必要なんだよ、その金額は驚くなよ?、豪邸が一軒建つ金額なんだぜ?」
「だからほとんどが私立の学校だし、貧しい希望の島の学校には無理なんだよ。」
貧しいと言葉に出した瞬間ミノリの胸がチクリと痛んだ。
本当に夢の島の人たちは貧しいのだろうか?…
みんな言葉を失ったが、トモが先生に相談してみよう!と言った。
タツミはそうだな、何か手があるかも知れない、ミノリが出たいんだろ?、出られる方法を考えよう!と言った。
ユウはワクワクしてきたー!と興奮している。
マコトは…マコトはミノリを見つめていた。
そして口を開くと、ミノリどうする?と言った。
ミノリはコクンと頷いてから、よし!明日の放課後にみんなで職員室に行こう!と力強く言った。
満天の夜空に、又大きな流れ星が流れた。
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