第三章 東京



深海悠馬は私のストーカーだ、昨日だって嵐の中でも私に付きまとっていたから見られたんだ、私が学校を早退した後、深海も早退して私についてきたんだ。


普通なら恐怖を感じるはずだった、私にとって深海悠馬は危険視すべき存在だった、だが私は彼が現れたことで安心感を覚えた、むしろそれを求めていたようだった。


深海は私の前に立ち男達と向き合った、顔の半分が動かない深海の顔だがその半分の表情は明らかに男らを敵視し、睨みつけていた、深海はポケットからカッターナイフを取り出し男に構えた、いつでも取り出せるようなところから出てきたそれを何の違和感もなく男に向けた。


「オイオイ、ヒーローごっこはいいけどよ、ガキがそれを使うのは早いんじゃねぇの?」


さっきまで聞こえなかった男の声が今度はしっかりと聞きとれた、


「大丈夫だから、君は逃げて」


深海は私に逃げろと言った、大丈夫だと?大丈夫な訳がない、だが、私は逃げるしかなかった、彼に従うしかなかった、彼のことしか信じることはできないから、彼を頼るしかなかったから。


私は走った、疲れることを忘れたように、体力を無視して足だけが回転していた。


走って走って駅に戻る、


駅に着いた瞬間に走り続けた疲れが一気に襲ってくる、休まなければ、適当に座れる石積みに腰をかけた。


深海のことが頭から離れない、大丈夫だろうか、彼の安否を確認したい。私一人で帰るわけにはいかなかった。


しばらくして、少し落ち着いた頃、元から人の多い駅の前にさらに人がごった返す時間になった、


人混みの中から1つの影を見る。不自然な動き、異様な空気を放つ1つの影。


深海だ


彼は血を流していた。いや、浴びているのだろうか、その肌にしみる血が誰のものなのか私には判別できなかった。



この明らかに異常な姿をした彼をこの大勢の人の中でハッキリと見ていたのは私だけだった、彼とすれ違う人は彼をわざわざ見ないように避け、目をそらす、見てはいけないもののように。



異常だ、


私は深海に駆け寄った、深海は私と目を合わせると驚いたような顔をした後、片方の口角だけを少し上げて言う


「良かった、無事で良かった、」


それはこっちのセリフだ、だがそのセリフは言えなかった、近くで見ればやはり大きな怪我をしている、歩き方からもそれは無事とは言い難い状態だった。



「大丈夫か?」


大丈夫な訳ない、わかりきった上で自分でもおかしな質問をしたと思う、



「大丈夫、もう帰るよ」



予想通りの応えだったが、そんなわけない、


「最寄り何処?」

私は深海に聞いた、戸惑いながら深海は答える、


「え、、A府だけど、、、」



「A府?こっからだと私の方が近いな、」


「え?」


「アンタなら知ってるんだろ私の家くらい、どうせ家まで付きまとってくるんだろ、面倒だから一緒に帰るぞ」


「・・・・・・・・」


深海はポカンとしていた


「隣にいた方が確実に守れるだろ、もう、早く帰りたいんだけど?」


「うん・・・」


私は深海の体を少し支えながら駅に向かった。

























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