第八話 あらわる敵は知り合いばかり
まさか。
この声に聞き覚えがあった。
“そらっち”という呼び方にも。
こう私を呼ぶ人は今のところただ一人しか知らない。
ばれているのだろうけどそっとソファの下から様子をうかがう。
おそらく二人だけ。
船田先生と、あの人の合わせて二人。
「まさかそらっちがあの組織の王だとは思わなかったよ。まあゆっくり話そうじゃあないか」
「……」
相変わらずな格好つけの口調が気になる。
普段はまじめな“先生”なんだけどなぁ。
もう観念するしかないか。
私は逃げられそうにもないのでおとなしく立ち上がった。
船田先生は再び突き飛ばされるのではないかと警戒している。
「河野先生、私だって先生が敵だなんて思わなかったですよ」
その隣にいたのは河野先生。数学を教える面白いと評判で人気の先生だ。まだそこまで年はいっていないはずなのにダジャレの持ちネタの数には驚かされる。
それにしても敵に教師が多いのには疑問を抱く。
偶然なのか教師になってからの話なのか。
それとも別の理由があるのだろうか。
ともかく敵に正体が知られている以上倒すかどうにかしないといけない。
「ちょっと目を見せてよ」
「え?」
突然で驚いたが理由はわかっている。“あの黄金の目”を確かめるためだ。
河野先生は私の顔をじっと見つめた。ちょいと顔が近すぎませんかね。
「すげー、黄金の目にクロックに似た顔。でもかわいそうだよなぁ、先代の呪いのせいで敵にこうやってばれちゃうからさ」
「知ってるんですか?」
「もちろん」
王族の目が光ってしまう理由は私のひいおじいちゃんにあった。
昔、とんでもなく強い力を持った能力者と友人になった先代。
だが、悪い奴らに騙されたその友人は悪いのは先代だと言い聞かされ、ひいおじいちゃんを恨み呪いをかけた。
いつまでも憎いお前がわかるように、と言葉を添えて。
先代は誤解を解きたかったが結局この呪いも解けないまま私にまで受け継がれてしまっている。
そしていつの間にか目が黄金に光る私たちは能力者の王族と呼ばれるようになったのだ。実際能力者組織を立ち上げ事件解決をしているのだから、
その親友は今もどこかできっと先代を恨んでいる。
とある能力で生き続けながら。
確かこの二人の話は明治初期あたりのことだったはずだ。
「さあ大空、我々に力を貸してもらおうか。ウォッタさんもそんなに和んでる時間はありませんよ」
船田先生は鋭い口調で河野先生と私に言う。
この口調からいうと河野先生のほうが上のよう。この人あんなに普段はヘラヘラしているのに意外と権力はあるのか。
「嫌ですよ。力でこの世を支配しようとするような人達と手を組むなんて」
「言うことを聞かない王様だなぁ。そこは
河野先生は笑っている。でもその笑顔にはなにか別の感情が混ざっているように私には見えた。
敵とは思えない表情を見せながら。
というか私は敵のアジトで何をしているのでしょうか。
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