第五話 相手の組織へ勝手に訪問?

 いつの間に気を失っていたのだろうか。

 見覚えのない大きな屋敷の一角のような場所にいた。相当古い部屋なのだろう。少しくすんだ赤いじゅうたんが一面にぎっしりと敷かれている。今どきこんな場所が存在するなんて驚きである。


「どうやったら抜け出せるのかなぁ」


 ドアはあるものの鍵は開いていないらしく、何度かガチャガチャとしても開かない。残念ながら私にピッキングの能力はないのでここから出るのは不可能である。ああ、こんな時に鍵を開ける能力が使えたら。


 あまりにも理不尽な展開に、夢のようなことを考えてしまう。


 窓があったらと思ったが窓も無い。どうりて薄暗いわけだ。

 これじゃあ不健康になっちゃうよー。

 なんてのんきなことを考えている暇ではないのだが。


「はぁ、なんてたちの悪いライバルなんだろうなー」

「悪かったな、たちが悪くて」

「うわっ」


 いきなり後ろから声が聞こえて素直に驚いてしまう。どこまで聞かれていたのだろう。まさか今の棒読みな悪口が聞かれていたなんてなんて恥ずかしい。

 そこに立っていたのは見慣れた船田先生だった。


「船田先生、ほんとに死ぬところでしたよ」

「よく命を狙ってるかもしれない相手にそんな態度でいられるよな。俺なんか能力でやられちゃうかと思ったけど」

「いや、本音が出ちゃって」


 確かによく考えてみれば今目の前にいるのは私を連れ去ってきた人なのだ。それを当の本人に言われるのは相当まずいことなのかもしれない。

 私は試しに戦闘態勢風の構えをしてみた。本当はほとんど戦ったことないんだけどね。


「大空、今更戦おうって言ったって無駄だぞ。今いるのは俺らの基地なんだからな」

「そうですか? 逃げるぐらいならできるかなぁと思っていたんですけどやっぱ無理でしたか」

「何言ってんの? そんなことさせる奴だと思ってたのか? そこまで甘くないよ」


 呆れたように船田先生は言う。逃がさないぞと言いたげな顔で。

 私だってこのままここにいるわけにはいかない。でも相手がどれくらいいるのかを分からずに動くのは怖い。もしかしたら真っ黒いなスーツに黒いサングラスの人が一斉に出てきて取り押さえられるっていう可能性もある。


「そっ、それにしてもここすごいところですよねー」

「たしかにここすごいよな。城って感じがして。っておいっ! なに話逸らしてんだよ」

「あははっ、いやぁこんな建物見たことが無かったんで……」


 したくもないのに相手の基地をお宅訪問することになってしまった。

 なんと豪華な内装なんでしょう。アンティークな小物たちが並べられていてそれがまた高級感をプラスしています。


 なんてこんなことを考えていていいのだろうか。


 戦う気ゼロの私の目の前には戦う気が満々な先生が立っている。

 ああ、なんか先生から暑苦しいオーラが見えてきた。

 

 ライバル基地へのお宅訪問は楽ではありません。

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