第二話 ライバルはすぐそこに

 船田先生に呼び出されたものの、一体どうしたらいいのだろう。

 どこに行けばいいのかはわかっている。呼び出しと言えば“魔の多目的室”だ。先生に「ちょっと来い」と言われれば、行く場所はあそこしかない。あそこでは数々の生徒が呼び出され、説教を受けてきた。そこに行った者は皆不幸になるため代々魔の多目的室と呼ばれている。まさかあそこに行くことになるなんて。なるべく目立たないようにしている私はあそことは縁がないと思っていたのに。

 

 野次馬達に見送られながらも魔の多目的室へ向かった。

 はぁ、足が進まない。


 廊下をゆっくり進み、多目的室のドアから中の様子を覗く。

 すると仁王立ちで窓から外を覗いている船田先生が見えた。中に入れずにいる私に気づき、おいでという風にジェスチャーをこちらにしている。


 やだなぁ。

 そう思いつつ渋々中に入った。


「大空、別に悪いことをしたから呼んだわけじゃない。委員会のことだ」

「あっ、委員会ですか。良かったぁ~」


 思わず本音が出てしまい慌てるが船田先生は笑っている。

 ちょうど今は委員会の引継ぎの時期なのでこのような話があってもおかしくはない。


「それで委員会ってどうかしたんですか」

「それがな、図書委員が一人抜けちゃったから大空にお願いできないかなと思って。いいかな?」

「全然大丈夫ですよ。でも今まで委員会やったことないんですけど大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ。俺が担当だからわかんないことがあったら聞いてね」

「はい」


 自分が怒られると思っていた分なんだか不思議な感じがする。でもこれで安心して朝を迎えることができた。さすがにこんなさわやかな朝から怒られるのはきつい。


「じゃあ時間とっちゃってごめんね、もう戻って大丈夫だよ」

「じゃあ、失礼しました」


 やっと戻れる。ほっとしながら船田先生とすれ違ったその時、


「まて! 大空、止まるんだ」

「え?」


 ものすごい気迫でいきなり船田先生に止められ、何が起こったのかわからなくなる。今度こそ怒られる?


「大空、目をよく見せて」


 船田先生は私の目をじっと覗いた。嫌な予感がする。


「大空、いや、王様って言ったほうがよかったかな。目が黄金に光っている」

「まさか……」

「やっと見つけることができた。俺たちの好敵手ライバル


 やはり嫌な予感は当たっていた。私、王族組織リーダーの家系にあたるものは他の能力者とすれ違うと目が黄金に光ってしまうという体質がある。この体質は、昔々にある出来事が原因で我々の一族に呪いがかけられたことによって起こるらしい。そのせいでリーダーの立場をよく思っていない奴らにもばれてしまうというとんでもなく厄介な呪いなのだ。

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