第2話 「唯の大好き」
「お兄ちゃ〜ん、一緒にゲームしよっ!」
「おー!いいな、ちょうど俺もやりたかったんだよ」
「さすがはお兄ちゃん!グッドタイミングだね」
唯の大好きな自慢のお兄ちゃんの名前は「淮」っていいます。唯の名前も実は、お兄ちゃんの名前に似せて付けられた名前だったりします。ほら、「ゆい」と「かい」ってなんか響きが似ているし、なんといっても、字がよく似ています。
今日は祝日。だからお兄ちゃんも唯も学校はお休みなんです。お兄ちゃんと唯は幸せなことに同じ学校に通っているんですよ。
学校の名前は「佐々井高校」。ほとんど無名の学校だと思います。ほとんどの生徒が女子なおかげで、友達ができすぎちゃったのが唯の悩みでもあります。幸せな悩みなんですけどね(笑)
因みに唯は「動画編集部」っていう部活に入っているんです。この部活、名前からは想像も出来ないけど、女子部員しかいないんです。いや〜、ほんとになんでなんだろ。結構楽しいんだけどなぁ……。
今日はそんな動画編集部もお休み。家でゆっくりできるのです。
あ、それからお兄ちゃんは、美術部に入っているそうです。こちらもなんと、驚くべきことに、部名とは裏腹に男子部員しかいない部なんです。お兄ちゃんはいつも楽しそうに部活の話を聞かせてくれていました。本当に楽しそうでした。
───────────二ヶ月前までは。
そう、ちょうど二ヶ月ほど前、いつも通り家に帰ると、いつもは唯より後に帰ってくるお兄ちゃんが先に帰ってきていたのです。あのときは、初めてのことだったので、驚いたというか……その……お兄ちゃんになにかあったのかと心配になってしまいました。後になってお兄ちゃんに聞いてみると、美術部の活動日が減ったと言っていましたが、やはり心配です。
あれから約二ヶ月が経った今では美術部の活動日であるという、月曜日・水曜日・木曜日だけは唯の方が先に家に着くという生活に慣れてきました。
でも、まだ少し引っかかるところはあります。
それは、お兄ちゃんがお友達と遊ばなくなった、という点なのですが、これがどうしても良くない予感を際立たせているのです。
きっと、美術部の活動が減ってお友達と遊ぶ機会が減っただけなんだろう。と、思おうとはしてみるものの、やっぱり気になります。
「ねえ、お兄ちゃん」
「どうした、唯。敵を倒したのか!?」
あ、ゲーム中なんだった。てへっ。
「あー、そうじゃないんだけど……」
「まさか、あのレアなやつをゲットしたのか!?」
「まさか〜。あのアーサーをゲットなんてまだ唯には無理だよ」
「じゃあ、どうかしたのか?」
やっぱり、お兄ちゃんはいつも通り。
変なことを一人で考えてかってに悩んでるのは唯のほうだったみたいです。
「ううん、なんでもないよっ!よーし!頑張ってアーサーをゲットしよう、お兄ちゃんっ!」
「おう、俺に任せとけ!」
それにしても、お兄ちゃんってなんでこんなにゲームが上手いんだろ……。
あ、さてはお兄ちゃん、部活休みの日に早く帰ってゲームしまくってるんじゃないですかぁ!
こうなったら、唯だってもっともっと上手くなってやるんだから〜!
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