第4話 女性アパレル店員 相談者

今日の予約は…と予約スケジュールを見て不安になった。

アパレル店員 女性(27)。

女性かー…不安だ。


何が不安かと言うと ここのサイトの予約は7割を女性が占めている。

自分で言うのも何だが スピリチュアル系のモノは女性ウケがいい。

だが 実際予約して時間通りコンタクトをとれるかというと 男子が8割ドタキャンしない率に対して 女性のドタキャンする率は8割。

その中には連絡有りはごくわずかでほとんど 音信不通。

それっきりならまだいいが 数日後予約入れ直してあったりと振り回される事が多い。

匿名なのに なぜ同じ人物か分かるか?

一応希望者には HN(ハンドルネーム)も作れ そうする事でレビューが書ける。

最近は匿名で予約する人よりHNを使う人が多く そこに個性を持たせたいのだろう。

そういう訳で 再度予約者がHNで分かる。

それにドタキャン率はHNまで作ってる人の方が 断トツに多い。

はっきり言ってしまうと HN持つ人ばかりだ。

個性付けが 逆にマイナスなイメージになってしまっている。

一応HNも他で同じものを使っているかもしれないので 公開はしないようにしている。


今日は空白の1時間を過ごさないように…と願い サイトのコンタクト窓口から 通信開始をクリックした。



「あのー…いらっしゃいますか?」


「はい!うわぁーサイトのメッセージボイスと一緒だ!本当にかっこいい。好きな声です!」


「え?ああ そうですか? いやあの一応受け手がちゃんと人間で あと教えてくれたマスターあ 師匠代わりの方にアドバイス頂いて 中には話し声が苦手で話すのもキツイという方もいらっしゃると それで自己紹介がてら一言サイトの効果音代わりで作ったんです。」


「すごい!師匠がいるって本格的ですね!それにそういう心遣い 良いですよねー!私 そんな人好きです。」


「いやいや全然です。信用 信頼あって初めて相談って出来るものですから。アナタのお声も優しくてステキですよ。」


は?僕は何を言ってるんだ。

自分で言って すごく恥ずかしい優男のセリフを言ってしまった。

僕はどこの紳士だよ…それより これでは勘違いされてしまう。

軽くペースを持っていかれて…やっぱり僕はまだまだ未熟だ。


「あの...失礼しました。早々ですがご相談内容お伺いしていいですか?」


「ああそうですね。時間があるんだった。えっと 私やたらと付き合おうって言われるんです。最初は友達なのに すぐ勘違いしてきて。で 断ってるんですけど そういう事が多いせいか 本当に大好きな人が 離れていくんです。」


「なるほど…。」


でしょうね。

勘違いされるでしょーよ!

僕なんて初対面で 2回は(好きです)言われてますから…それでつい調子乗っちゃったので そう(好き)のパレードがあると 気があるのかと思っちゃうからー!!

それより 自覚がなくて大事な人が離れるのは辛いことだ。


「ご自分で 勘違いされるのはどんな所か 心当たりありますか?」


「うーん アパレル店員って割とモテるから 見た目でしょうか?やっぱり男性って 見た目がいい子 連れて歩きたいんですか?」


え?質問に質問で返された。

しかも 見た目のせいと割とやんわり可愛いのよアピール来てる。

それか…人を近づけるけど 離れていくのは。


「見た目がいいというのは その人の基準で。簡単にいうと好みかどうかなので一概に見た目のせいとは言いきれないですね。相手のタイプだったのか あるいはタイプだと思う要因があったのか。先程 勘違いと表現されてましたが どこを勘違いされたと思います?」


「うーん 仲良くなると ウザイほど絡むので そのせいかな…。でもウザかったら 注意してって いつも言ってるんだけど。」


ああああ…(好き)連呼の絡みに 異性はウザイと言えるほど強者かなぁ。

ちょっと気づきが鈍いのか よし!


「もしですよ 僕がアナタの雰囲気が好きだ。仲良くなりたいと言ったら 連絡先教えますか?」


「え?全然いいですよ!ぜひ私仲良くなりたい!って思ってたくらい。私も雰囲気好きです!」


「いや!ちょっと待ってください。もしです…例え話で。そんな気軽に連絡先や(好き)と言うと 相手は勘違いするものですよ。」


「私は 今の例えじゃなくて本当にアナタの雰囲気好きで すごく仲良くなりたいですよ!」


話聞こえてなかったかな…これで僕は何度(好き)と言われただろう。

素直に好みを言うのは悪いことじゃない。

ただ ちょっと古いが言わせてくれ (ココは欧米か!)

日本文化も言動がオープンになってきたけど まだ免疫のない異性は多い。

特に LIKEとLOVEの差なんて 日本語では1つまとまりの(好き)になる。

勘違いされるのも分かる。


「好みを素直に伝えるのはいい事だと思います。けれど 相手にご自身がおもっている意味と 同じ意味でとらえるかは分からないですよね?だから 安易に自身の価値観での言動は 勘違いや傷付ける事もあります。僕も気を付けてることなのですが 言葉選びは大事ですよ。」


「…あの」


「はい?」


理解してくれただろうか?僕の中では 核心をついた…少しキツい事を言ってしまったが 今の僕にはこれが精一杯の表現だ。


「…また予約取っていいですか?1時間ってすぐ経ちますね。多分 アナタの優しい心遣いある言葉聞いてるとあっという間なんですね。すごく好きなトーンで話すから心地よくって。むしろ 大好きな雰囲気です!」



…うん。

響いてないっと言うか ビクともしないね〜。

とりあえず時間になったので また後日予約スペースに空きやタイミングが合えば…といって通信を切った。

果たして僕は1時間で どれだけの(好き)を頂いたのだろう。

(好き)疲れってあるんだなーとぐったりした。


その後 彼女から再度予約は入っていなかった。

うんうん そのパターンね 察し。

そしてサイトレビューに(ここの人の雰囲気大好きー!!また来るね(*^^*))と…。




誰か。

僕を癒して下さい。

現代でヒーラーは つらいです。

転生させてください。

異世界に。


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異世界に転生したいヒーラーです Len @norasino

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