啜り泣きの留守電
今、私が受け持つ小学校のクラスでは啜り泣きの留守番電話にまつわる噂で持ちきりだった。教職員は知らない。いや、同じ年頃の子供がいる人は子供から聞いて知っている。
内容はこうだ。非通知から電話が掛かって来る。非通知は出るなと親に教えられている子供たちは出ないので、じきに留守電に切り替わる。そこで切れるか、セールスのメッセージになるかと思いきや、啜り泣きが聞こえてくる。たっぷり30秒は啜り泣きを吹き込むと、電話は切れてしまうのだそうだ。
そこで、怖くなって部屋を出て行くと廊下に知らない女が立っているという。
立っている女に何をされるかは語られていない。都市伝説とはそういうものだ。一応、留守電の啜り泣きメッセージを削除すれば家の中から女はいなくなるとされている。
だが、最近になってこの噂には尾ひれが追加された。この留守番を受けた人からこの話を聞かされると、次は聞いた人のもとに電話がかかって来るのだと言う。怪異が伝染すると言うのだ。
私はそう言うものを信じていないので特に気にしていないが、他の学年の先生が、留守番をしている息子から変な留守電があったと言われたのだと言う話をしてくれた。その息子は留守電削除のことを知っていたのでことなきを得たそうだが。
「あ、留守電入ってる」
その先生は言った。その時私のスマホも鳴った。誰からだろうと思って画面を見た私は背筋が寒くなるのを感じた。
『非通知』
(留守番、伝染、啜り泣き)
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