お地蔵様の首
ゲームセンターの裏手にはお寺があって、お地蔵様が並んでいる。優しい表情のお地蔵様は参拝者も多く、子供からも人気だ。ランドセルを背負った少年が手を合わせているところを見たことがある。
だが、ある日のこと、お地蔵様の首が持っていかれる事件が発生した。住職はひどく心を痛め、犯人に対して、地蔵の首を返すように呼びかける張り紙を出した。
しかし、住職を嘲笑うかのように、夜毎にお地蔵様の首がなくなっていく。こんなことをするなんて。人の悪意に打ちひしがれた住職は、そのまま心労で入院してしまった。
その数週間後、ゲームセンターで異変が起こった。クレーンゲームで撮った景品が、取り出し口から出てきた途端地蔵の頭に変わっているのだ。ああ、ここに地蔵の頭を盗んだ犯人がいるのだと誰もが察した。やがてそのゲームセンターに人が寄り付かなくなった。
それから数日後、地蔵の頭が全て戻されていた。だが、石段の下で一人の男が背中を強打して目を回しているのが発見された。救急車で病院に搬送された彼は、目が覚めると地蔵盗難の罪を自白した。
怖くなって首を返して帰ろうとしたところ、後ろから声が掛かったのだそうだ。
「返してくれてありがとう」
恨み言ならまだしも、礼を言われたのが余計に怖くなって足を滑らせたのだそうだ。
「お地蔵様は慈悲深いですからねぇ。不信心者にはわからなかったのですね」
元気になって退院した住職はそう語る。
(ゲーム、地蔵、背中)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます