第4話 家に帰れば猫がいる

 バスに乗って家に帰ってきた。

 家は奈良市北部のベットタウン、そこの集合住宅の1家がニート侍と女神の居住地である。


「ドア閉めたで御座るか。」


「鍵も閉めたよ。」


 女神の答えを聞いてからニート侍は玄関とリビングを隔てる扉を開いた。


「にゃぁぁ~~~。」


「はぁ~~~~、よしよしよし。只今で御座るよクロちゃん。」


「にぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


「女神が嫉妬する漢と猫の仲(笑)。」


「顔がマジで御座るよ。」


 主人の帰りを出迎えてくれた愛猫を抱き頬ずりをしていたニート侍は、女神の暗い笑顔に頬がつる。


「冗談ですよ。」


 と、いつもの優しい笑顔に戻った女神は帰りに買ってきた食料品をしまい始めた。

 その間にニート侍は黒猫のクロちゃんのえさを用意する。


「それで今日買ったのは何ですか。」


「マンガで御座る。「異世界〇じさん」と言う作品で面白いやつで御座る。」


「あれ?それってインターネットで読んでたんじゃ。」


「そうで御座るがこれは単行本も欲しくなってしまったので御座る。」


「松永さんって欲望の向きが変わってますね。豪華な性活だって望まれれば用意できましたのに。」


 ニート侍は集合住宅での生活を望んだ。

 これは戦国時代にて長屋暮らしを思い出すからだとの事。


「確かこの主人公さんも異世界に言っていらしたんですよね。」


「うむ。異世界から帰ってきたおじさんがSEGAと言うゲームと異世界の生活をのんびりと語るマンガで御座る。」


「松永さんもこのおじさんみたいに異世界での生活を語ってくれるのですか。」


「しないで御座るよ。拙者などが語ったところで面白くはならないで御座ろうし、何より拙者はただ殺し続けていただけで御座る。ソレに疲れたのでこうして休みをもろうたので御座る。」


「ならば贅沢をなさってもよいのではないのでは。」


「ははは、知っておるであろう。拙者は殿の影武者として腹を斬って果てた身、その拙者を異世界にて生き返らせて武士として戦わされた。ほかならぬ女神であるお主によって。なれば次があるやもしれん。その時の為にも貸しは少ないほうが良い。―――拙者は今はただ癒されたいだけで御座るよ。」


 膝に乗せた猫を撫でながらそう語るニート侍に女神は沈黙で答える。


 これは戦いに疲れた一人の男の休暇の話。


 ただ出かけてラーメン食べた感想を言ったりするだけの、ヤマもオチもないほのぼの日常の話である。


 それだけである。


 それだけだからいい。


 もしかしたら他の話もあったりするかもしれない。

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