第3話 初めての煮干しラーメン

 さて、ニート侍と女神さまがただラーメンを啜っているだけの光景である。

 それだけの光景が続いて、2人が食べ終わってからの一息の話である。


「店に入った時はなるほど煮干しで御座る。と思ったもので御座るよ。」


「私は実はそんなに煮干しが好きではなかったのです。」


「そうなので御座ったか。実はこの店を選んだのは迷惑で御座ったか。」


「気にしないでください。貴方の余生に付き合うのが今の私の役目なのですから。」


「フム。拙者は戦国に生き、そして死んだ侍で御座る。異世界でもそうで御座ったが男にとって女性を都合よく扱うのが当たり前だった人間で御座るため、でりかしぃなるモノにかけていると思うので嫌なことははっきりと申してくれ。」


「私のヒモになっることを願った方にしてはどのような風の吹き回しですか。」


「拙者、この日本に住むようになってから少しは学んだで御座る。―――ただ、それだけで御座るよ。」


「今回の私の経験みたいなものですね。」


「うむ、してそう言うということは―――」


「はい。煮干しラーメンとってもおいしかったです。」


「そうで御座ったな。拙者としても最初は煮干しと聞いてアノ独特のえぐみを覚悟していたで御座ったが―――」


「私もそれが苦手だったのですが、えぐみはなく純粋な煮干しの旨味と言うものを知ることができたと思います。」


「それに看板によると、とり白湯のスープを使っているそうで御座るが、これが煮干しの旨味によって鶏の持つ油の甘みをよく引き立たせてくれているで御座った。」


「私たちは同じ旨辛でいきましたが、辛さの中に甘みを感じられるのも良かったです。」


「鶏の胸肉が上に乗って御座ったがアレが出汁の旨味をよく吸い込んでくれるで御座った。」


「トッピングがシンプルな分スープが際立っていたから、煮干しラーメンのイメージを変えてくれた感じがする。」


「しかし、拙者ら二人とも辛いのが好きで御座ったから同じメニューを選ぶことが多くなりそうで御座るな。」


「辛いのを行かない時は別々のメニューを頼んで食べ比べしましょうね。」


「それではまるで夫婦めおとか、現代で言うとこの恋人と言うものみたいでは御座らんか。」


「あら、そのつもりで願い事をされたのではなかったのではないのですか。」


「いや、それはそのぉ~、――――拙者、今まで女子おなごとこうして過ごす機会が無かったもので御座って、正直期待はしてたで御座るがどうしたらいいのかは分からんので御座る。」


「フフフッ、そんなに難しく考えないでください。私は貴方の願いを叶えるためにここに居ますが、それを苦に感じませんし―――楽しくもあるのです。どうか都合のいいように考えください。」


「そんなのでいいのであろうか。」


「そんなのでいいのです。」


 はたから見れば親子ほどに年が離れているように見えるオッサンと美少女だが、実際は姉さん女房な2人は「ご馳走様(で御座る)。」と言って店を後にした。

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